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ねこのつめ合わせ

会社員☞海外大生☞会社員☞漫画家 瞬間的にやりたいことをやっていると職業遍歴が散らかった。ラインスタンプ出したけど売れず、漫画描いたけど人気出ず、ノベル書いたけどこれに至っては誰にも読んですらもらえず。何かを制作・リリースすればするほど自分の存在意義が透明化していくように感じる今日この頃。漫画家なのに最近漫画描けていないからただのひきこもりに進化してこんな風に言葉を散らかしてます

倫太郎君は英会話スクールに行きたくない(1)

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毎年この季節になると特に思い出してしまう忘れられない人がいます。出会った頃、わたしはまだ新人の英会話講師、その人は当時9歳でわたしの生徒でした。毎週レッスン日である土曜日の午前中1時間だけのお付き合いでしたが、彼と過ごした1年間はわたしに、親の期待、子どもの気持ち、親子の関係など様々なことを考えるきっかけをくれました。それらのきっかけを主に備忘録として記しておこうと思います。

 

 

目次

 

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何の因果かキッズクラスを担当することに

 

数年前の今頃わたしは英会話スクールの講師として勤務し始めました。

このスクールでは小中高校のように年度・学期制度+担任制を導入していたため、中途半端なタイミングで着任したわたしは4月の新学期まで1対1のプライベートレッスンや欠席した講師の代わりにグループレッスンを中心に教えていました。生徒様は全員大人。

 

それがある日、主任講師に

「成人クラスに加えきゃとらに先生にも次年度はキッズクラスを担当していただきます」

と言い渡されたのです。

 

 

どん底に憂鬱になりました。わたしの父は小学校教師です。脱サラして小学校教諭になる夢を叶えた父。しかし、家では決して多くを語らない父が学校で苦労していることは何となく分かりました。母経由で聞いたところによれば、接するのが難しい児童なんて1人2人ではないし、さらに近頃は児童の両親関係でも一筋縄ではいかないことが色々あるようです(ここではサラッとも言えないようなことです)。

 

 

溜息の多い父の背中を見ながら育ったわたしは『教師』という職業を将来の選択肢から自然と排除していました。

 

 

それがここに来て皮肉なめぐりあわせ。決して嫌いとかではないけど子ども好きなどと口が裂けても言えないわたし。というより、子どもをどう子ども扱いすればよいか分からないわたし。

 

そんなわたしがキッズ英会話クラスの担任!

 

こんなに風に悶々と考え込んでいるとは露知らぬ主任はわたしに、そういうわけだから今度主任のわたしを含む3人の講師のレッスンをまずは見学してね、と爽やかに言ったのでした。

 

 

こんな講師になれる気がしない

 

レッスンを見に行くよう言われた講師は3人とも優しくて、明るくて、如何にも子どもに慕われてそうな面々でした。それがまたわたしを一層憂鬱な気分にさせます。

歌のお姉さんみたいなハイキーボイスとハイテンションで

「オッケーエヴリワン♪」

みたいなことをしないといけないんだろうな。ふとはいだしょうこを思い出します。

わたしなんて子どもの頃ですらそんなテンション高かったことなかったわ。

 

 

しかも彼らは皆人気講師でもあり、保護者様からの信頼も厚かったりするのです。

キッズクラスはレッスンが終了するごとにクラスの保護者様を集め、その日のレッスンで教えたことや、クラスでの生徒様の様子を報告します。

 

「今日は『Where+Be動詞~』を使った練習をしました。~部分に当てはまる単語も20ほど新たに学びましたが、皆さん発音が非常によくできていました。エクササイズも兼ねたゲームも構文の意味をよく理解して遊べていました。」

 

教育熱心でギラギラし(ているかどうかは別としてきゃとらににはそう見えてしまう)たお母様方に囲まれながらも堂々とした報告っぷり。しかも話しながら子どもと達と視線を交わしつつ「今日も楽しかったね」と笑顔でコミュニケーション。そんな講師と子どもの様子を見ながら満足そうにうんうん頷くお母様方。

 

出来る気がしない。

 

とはいえ仕事となれば私情を挟み込むわけにはいきません。せっかくベテラン講師のレッスンを見させてもらえるのです。彼らがどのようにして子ども達の心をとらえ、保護者様方の信頼を勝ち取るか、よく観察して盗めるだけ盗もう!そう意気込みレッスン見学に臨みました。

 

 

いざレッスン見学へ…のはずが 

 

ピッタリ締め切ったドアの反対側に居てもなおその教室からは子どもたちの大きな声が聞こえていました。わたしは教室の外からこの日は主任のレッスンを見学していたのです。ドアにはガラス部分がありそこから室内の様子が見えるようになっていました。

 

 

響き渡る子どもたちの元気な声。しかし彼らが口にしていたのはレッスンターゲットの構文でもなければ、単語でもありませんでした。というか一斉に喋っているので何言っているのか基本分からないのですが断片的に聞こえてくるのは

 

モンハン

クリスマスに買ってもらって

何それ1枚ちょーだい

あと何分で終わる?

 

など分かるだけでもこんな感じ。『レッスン中はNo Japanese(日本語禁止)』がルールだと聞いてたにもかかわらず完全に治外法権です。とか思っていると、主任がガヤガヤに負けないよう声を張り上げます。

 

「もうみんな、No Japaneseって言ったでしょ!全員マイナス10点!」

 

そう言うと主任はホワイトボードの左上、ローマ字で書かれた子どもたちの名前の横に仲良く並んだ数字を書き直し始めました。全員の点数から見る見るうちに10点がひかれていきます。

 

すると何とはじかれるように立ち上がった子どもたちが一斉にホワイトボードに押し寄せます。

 

「やめろー!」

「なんでおれがマイナス10点なんだよ?こいつの方がうるせーのに」

「こいつをマイナス300点にする!」

「じゃあおれはマイナス1000点!」

「じゃあうちマイナス1億って書く!」

 

そしてそれからはマーカーの奪い合い、ポイントのマイナス合戦になりました。なんかさっきよりもカオス。そしてポイントもカオス。みんな数字の0が20個くらいついています。こうなるとポイント制度も崩壊です。子どもたちはあり得ない数字に大声で笑ったり、数字をめぐってつかみ合いの喧嘩をしたり、あり得ないマイナスポイント食らって泣き出したりともう収拾がつきません。

 

 

するとこのカオスの中にあってわたしは一人の子に目が留まりました。いつからそこにいたのでしょう。入り口ドアのすぐ前で大の字になって寝転んでいる男の子がいました。妙に締まりのないボーっとした表情を浮かべて天井を見るともなく見つめています。騒音の最中にあって彼だけ別世界にいるみたいでした。

 

 

ふと男の子がわたしの視線に気付きます。一瞬不快そうな顔をしましたがすぐに元の締まりのない顔に戻ると今度はしゃがみ込み、口をかぱっと開けるとカーペットの上に涎を糸のように垂らして遊び始めました。

 

「うわ、倫太郎きったねー!」

 

目ざとく見つけた他の男の子のこの発言をきっかけに視線は一気に倫太郎君に集中します。もう何してんの!、主任が倫太郎君に駆け寄ります。しかしそんな主任には目もくれず無表情のまま倫太郎君は驚くほど通る声でこれだけ言ったのです。

 

「う◯こ!」

 

 これがわたしと倫太郎君(仮名)の出会いでした。

 

 

つづく

 

 

きゃとらに🐈 

  

 

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🐈つづきです☟

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